「気筒休止」が復権。今増える理由とは


気筒休止システムの歴史は古く1980年台前半頃より各社から登場し、
大型のV8やV6エンジンなどへの採用例が比較的多くみられましたが、
思いのほか普及は進んできませんでした。

しかしながら、2012年にCセグメントのベンチマーク車と言われるゴルフが
1.4L TSIという、いわゆるターボ過給式ダウンサイジング4気筒に
ACTと呼称する気筒休止システムをVWが採用してきたことから
再び脚光を集め始めました。


また、フィエスタ(フォード)も3気筒としては世界初となる気筒休止を
1.0L Ecoboostエンジンに採用し2018年より販売を予定。

マツダもマイルド・ハイブリットと組み合せ、自社初となる気筒休止を4気筒で準備中との情報もあり、今後、採用例が増えそうな気配です。
 

仕組み

気筒数によっては停止する気筒の組み合わせは様々なパターンがあります。
4気筒エンジンを例に挙げると、
休止させるのは真ん中の2気筒(2番と3番)が一般的となります。

①休止させる気筒の燃料供給を停止
②可変バルブの応用でカム山の無い部分にカムシャフトをスライドするなどし、
吸排気バルブを押し下げるのを空振りします



これにより、バルブの開閉は停止されシリンダー内は密閉状態となり燃焼は行われません。(この状態で気筒休止したピストンは上下運動を続行)
ただし、スパークプラグの放電は停止しません。

「スパークプラグの放電は停止しない」のは、汚れによる再稼働時の失火を抑止するため。

また、「シリンダーを密閉する」のは、
再稼働時の燃焼効率維持のためシリンダー内温度の低下を抑えるのと、
以下「効果」の中で記載するポンピングロスの低下が期待できるからです。
 

なお、密閉されたシリンダー内をピストンが上下し圧縮・膨張を繰り返すことでエンジン負荷とならないかが気になるところですが、

「押し戻した後は、自動的に押し戻される」という、いわゆるフライホイール的な回転安定効果となり、密閉による悪影響はありません。

ただ、ピストンが上下する際の摺動抵抗(物がこすれ合う抵抗)は残存することとなります。

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効果

「気筒休止」の目的は、ずばり大幅な燃費改善です。

厳しさを増す燃費規制(CO₂排出量規制)への対応として燃費改善が各メーカー最大のテーマとなってきており、ここにきて「気筒休止」が着目されている要因と言えます。


さて、気筒休止がなぜ燃費改善となるかは2つの理由がありますが、
この中で最も燃費改善に貢献しているのが「①ポンピングロスの低下」です。


ポンピングロスの低下

気筒休止状態となった場合でも、
休止以前と同程度のエンジン出力を確保することが必要になってきます。
このため、

●気筒休止による出力低下を、生きている気筒で補うため
  スロットルの開きが大きくなります


これに加え、
●シリンダーを密閉し休止した気筒は、吸排気をしません

この2つの要因から、
エンジン効率を著しく悪化させるポンピングロスが低下します。


ちなみに、スロットルバルブを持たないディーゼル・エンジン(※エンジン回転は噴射する軽油の量で調整)は、そもそもポンピングロスが非常に少ないエンジンですから「気筒休止」の有効性は小さくなります。

従ってこの点から、
「気筒休止」はスロットルバルブを基本的に装備するガソリン・エンジンに向いたシステムです。
 

バルブ駆動損失の低下

休止したシリンダーの吸排気バルブを押し下げる力が不要となります
 

今後の展開

気筒休止のタイミングは低・中負荷時となり、
特に一定速度でのクルーズ中が最も気筒休止の活躍場面となります。

そこで気になるのが、
「4気筒で動いていたものが2気筒に切り替わった際、
 振動や騒音が気にならないか?」


といった点ですが、
最新のVW1.4 TSIの場合、切替・復帰も瞬時に行われほとんど切り替わったことすらわからず、2気筒で走行しているのか4気筒で走行しているかも判別できないほどで、ドライビリティの悪化は心配無用のようです。


さて、日本の場合、加減速が多く気筒休止が最も活躍する一定速度で巡行するといった場面が欧州・米国と比べて少ないということもあってか、
国内モデルで気筒休止を採用するクルマは過去にも少なく、現状でも見当たりません。

しかしながら、シビアとなる燃費規制や平均速度が上昇するWLTCモードへの移行を日本でも間近に控え、完成度が増し作動領域を拡大した気筒休止システムは、燃費改善の有望な手段に昇格してきたようです。

現状目立つのは4気筒以下の小排気量エンジンへの採用例ですが、
6気筒以上の多気筒・大排気量エンジンといえども燃費改善が求められる低炭素社会を目指す時代に突入しており、エンジンの大小に関わらず「気筒休止」は今後、拡大していく可能性がありそうです。

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