ガソリンエンジンの熱効率をアップさせる注目技術


地球温暖化防止として燃費を改善しCO₂(二酸化炭素)の削減に迫られる各メーカー。

EV(電気自動車)やPHV(プラグイン・ハイブリッド)などの電動化を進めますが、EV航続距離が短い・充電時間が長いなど課題は山積み。
加えて高価なバッテリーの搭載が車両価格を押し上げ普及の足かせとなっています。


 
そうした中、ガソリンエンジンの熱効率改善技術は費用対効果に優れたものが多く、電動化が進む現在においてもエンジンの改善に向けた積極的なアプローチが続けられています。

現状、ガソリンエンジンの最大熱効率は最も良いもので40%程度。
それを50%まで改善するとの動きがある中で、新技術やリファインされた従来技術にどのようなものがあるかをみていきます。

 

新技術

 

HCCI

HCCI(予混合圧縮着火)は、予め空気とガソリンを均等に混じり合わせた混合気を吸入し、圧縮による温度上昇で自己着火・燃焼するもの。

従来のガソリン・エンジンと決定的に異なるのが、
スパークプラグによる着火ではなく、圧縮による自然着火とすることです。

<効果>
HCCIは超リーンバーンを可能とします。

非常に薄い混合気に従来のスパークプラグによる一点着火では、火炎が全体にうまく燃え広がることができず燃焼が安定しません。
その点、自己着火のHCCIは多点点火・急速燃焼となり希薄な混合気でも燃焼が安定します。


また、リーンバーンのため大量の空気を吸入することとなりスロットルバルブの開度が大きくなり、ポンピングロスが低下します。


HCCIの欠点として加速時など高負荷になると固有のノッキングが発生することが知られており、運転領域が狭いところ。

このため、高負荷時には従来のスパークプラグによる点火に切り替える必要があり、全域でHCCI運転をするのが困難となってきます。

また、自己着火ということで適切な着火タイミングと取る高度な制御が必要となってきます。

なお、この分野ではマツダが積極的で2018年度末にHCCI搭載車種の登場が予定されています。
 

燃料改質エンジン

ガソリンから「水素」を取り出し、本来の混合気と混ぜることで燃焼速度を高め燃効率を改善します。

従来のEGRに改質用のガソリン噴射装置と触媒を設置。
EGRを通る燃焼済ガスにガソリンを噴射し触媒を通過した際に水素を取り出します。そして、その水素を吸気ポートから混入します。
 



<効果>
拡散が早く燃焼速度の速い水素を混合ガスに購入することで、着火・燃焼が困難となってくる
  ①大量EGR
  ②リーンバーン
が可能となってきます。

また、コストが低く設置場所を多く必要としません。

従来は費用対効果の面で見劣りしていましたが、触媒の活性化にEGRの廃熱を利用したり触媒の性能向上で欠点を克服してきています。

各社とも研究をしていますが、日産・ホンダ・マツダが積極的。
数年後には登場の可能性があります。
 

マイクロ波プラズマ燃焼

実は、既存のスパークプラグが発生する火花にも「小さなプラズマ」が発生しています。

そしてこの小さなプラズマに、電子レンジなどにも使われるマイクロ波を加えるとプラズマが大きく成長することが知られており着火性が向上します。

従来のスパークプラグにマイクロ波発生装置等を付加した構造で、比較的シンプルです。



<効果>
従来の火花点火に比べ、拡大したプラズマによる点火は着火性が向上・安定し、
  ①リーンバーン
  ②大量EGR
が可能となってきます。

エンジン本体の変更が必要なく点火プラグ系のみの対応で可能となり、場所を取らず費用対効果に優れます。

この分野ではダイハツが積極的で、近々に搭載エンジンが登場予定。

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リファインされた従来技術

 

ミラーサイクル(アトキンソンサイクル)

エンジンの吸気バルブを
● 早く閉じる
● 遅く閉じる 
のどちらかで吸気量を少なくし実質的な圧縮比を下げ、
圧縮比 < 膨張比 の状態を作ります。

昨今は可変バルブ機構の制御が高度化されきめ細かな調整が可能となっており搭載車種も増えました。これに連動するようにミラーサイクルの採用例も増加しています。



<効果>
ミラーサイクルには
  ①排気損失の低下
  ②ポンピングロスの低下
の効果があります。

通常の「圧縮比 = 膨張比」の場合、
膨張が終わり切ってもピストンを押し下げる余力が残っているにも関わらず、排気行程に移ってしまうため無駄にエネルギーを捨てています(排気損失)

現在のミラーサイクルの主流は吸気バルブの「遅閉じ」で、
圧縮行程となりピストンが上昇を始めても吸気バルブをしばらく開けておき、吸気した一部を吸気ポートへ押し戻します。

これにより実質的な圧縮比は減り、相対的に膨張比の方が多くなることでピストンを押し下げる力を無駄なく使い切ることとなります。
 

また、シリンダー内の圧縮空気量は減ることとなり、これは実質的に排気量が減ったことと同じ事となります。

にも関わらず、吸気する量は変わりませんから実質的に小さくなった排気量に比べ吸気量が相対的に多く必要なためスロットルバルブの開きは大きくなり、ポンピングロスの低下となります。
 

大量EGR

EGR(排気再循環システム)は排気ガスの一部を再び吸気側に戻すもの。

EGRは排気ガス浄化と熱効率向上という両方の側面を持ち、
当初の導入目的は排気ガスの浄化にありましたが、現在は熱効率向上が主な目的に移行しています。

現在主流のEGRは、クーラーを装備した「クールドEGR」を使い大量の排気ガスを再循環するものです。



<効果>
EGRは排気ガスを再循環することで ●NOx(窒素酸化)の低減 ●不完全燃焼で発生した有害物質の低減という排気ガス浄化効果がありますが、

熱効率の向上効果としては
 ①ポンピングロスの低下
 ②冷却損失の低下
 ➂ノッキングの防止
があります。

EGRで熱効率が向上するポイントは
「吸気側に再循環する排気ガスには、ほとんど酸素が無い」
ということです。

●酸素が薄くなる分、スロットルを大きく開き空気を多く取り入れる必要がある。
   ⇨ ポンピングロスの低下

●EGRクーラーで冷却された排気ガスが混合されることや、酸素量が低下することでシリンダー内の燃焼温度が抑えられる
 ⇨ 冷却損失の低下

●ノッキングは高温になると発生しますが、燃焼温度を抑えられるEGRはノッキングの発生防止になります。

これにより、ノッキングが発生しそうになると発動する「点火タイミングを遅らせる」という事が減少し、点火タイミング遅延による悪影響(出力低下・燃費悪化)が避けられます。
 

現在、ほとんどのエンジンにEGRは装着されておりEGR量も増加傾向にあります。従来、20%程度だったEGR量も30%近くまで混合する例も見受けられます。
 

気筒休止

気筒休止も古くから存在し当初は大型のV8、V6エンジンへの採用がありましたが、あまり普及することはありませんでした。

そんな気筒休止も小排気量エンジンを中心に復活の傾向にあります。


<効果>
気筒休止には
 ①ポンピングロスの低下
 ②バルブ起動損失の低下
の効果があります。

気筒休止状態では、
●出力低下を補うためスロットルバルブの開きが大きくなる
●気筒休止したシリンダーはバルブを閉じたままとなり吸排気をしない
ことから、ポンピングロスの低下となります。

また、休止したシリンダーのバルブを押し下げる力も不要となります。

気筒休止状態になるのは定常速度などの低負荷時となり4気筒エンジンであれば2気筒のみを稼働させ、加速時などの高負荷となると全気筒(4気筒)稼働に戻すといったことになります。

この場合に気掛かりなのが切り替わった際の違和感ですが、最新モデルの場合、瞬時に切り替えが行われほとんど違いが判別できないまで改善が進んでいます。


現状、気筒休止は欧州を中心にダウンサイジング・エンジンへの採用例が多くなる傾向にあります。

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