好調スバルの「ツケ」の払い方

北米輸出が絶好調で業績が上向きなスバル。

2015年度の販売台数でみると
◆ 全世界販売台数:95.8万台(前期同期比:+ 5.2% )
◆ 国内販売台数 :14.5万台(前期同期比:- 10.7% )
◆ 海外販売台数 :81.3万台(前期同期比:+ 8.6% )

となり、国内販売が減少となったものの、北米販売が好調でカバー。
結局、4年連続で過去最高販売を記録しています。
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販売好調が続く米国では2018年にZEV規制が強化

スバルは海外販売の内、米国販売が58.3万台で海外販売の72%占めています。
そのメインの市場・米国では2018年からZEV規制の強化が開始されます。

ZEV とはEVFCVなどの排出ガスを一切出さない車両のことで、現在は経過措置としてHV、PHV等のクリーンカーも許容されています。

米国・カリフォルニア州を含めた12州では、自動車販売台数の一定割合をこのZEVとする規制を導入しており、この基準を達成できない場合、多額の罰金を支払うか、他社のクレジット(ZEV排出枠)を購入しなければなりません。

そして、2018年からは更に規制強化が予定されており、このZEV販売比率が増大されると伴に、
従来より規制対象とされていた日本の自動車メーカー3社(トヨタ、ホンダ、日産)に加えマツダ、スバルも対象となります。

おまけに、従来はZEVと認められていたHV(ハイブリッド車)は2018年から対象外とされることとなりました。

遅すぎた環境対策

2018年強化のZEV規制でスバルに掛かる重荷を整理すると、

①スバルもZEV規制の対象メーカーに加わる
②ZEV規制を実施している米国がメインの市場
③HV(ハイブリッド車)はZEVの対象外

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現在スバルにはHV車はあるもののその他は皆無。
PHV(プラグインハイブリッド車)もEV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)もありません。


今年5月に行われた決算説明会の中でいわれた今後の環境対策では、
◆2018年にPHV
◆2019年にダウンサイジングターボ
◆2020年にEV
を市場投入していくとしています。

理想をいえば、2018年予定のPHVが順調に売れてその販売比率が上がってくれればいいのですが、PHVの実績がないスバルに事はそう簡単ではなさそうです。

どうやら、PHVの技術は「86」を作ってあげた見返り (?) として業務提携先のトヨタから調達するようです。

EVについてはパートナーのトヨタがEVに消極的で、どこまで本気を出してくれるかが気になるところですが、スバルは過去にEVを手掛けた経緯が少なからずあり、独自開発でSUVを中心とした中・大型EVを海外中心に展望しているようです。

が、いかんせん対応が遅すぎました。
これらの環境対策は中期的展望。
2018年はもう間近に迫っています。

では、当面どうするのか?
「他社からのクレジット(ZEV排出枠)の購入」に頼る状況が続く気配が濃厚です。

スバルはすでに2015年9月末までの1年間でメーカーとして3番目に大きなクレジット量を購入したとのこと。

クレジットの購入は他社も行っていることなので、罪悪感というものは少ないのかもしれませんが、決してスマートなことではないことは確かです。
これが続けば、企業イメージにいいことはありません。

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偏るスポット戦略の影響

スバルの特色である
「水平対向エンジン」「AWD」「アイサイトを中心とする高い安全性」。

個性的で優秀な技術をもち、中規模ながら高いブランド力をもった自動車メーカーに成長しました。

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そのなかで、自社生産のクルマの全てに搭載する水平対向エンジンはスバルの大きな特色でありますが、
これがなかなかの曲者でメリットもあるけど、デメリットもたくさん。

<メリット>
◆低振動
◆エンジンが低く短く低重心
◆高安全性(キャビンに食い込みにくい)

<デメリット>
◆エンジン幅が広い
◆エンジン搭載位置が前よりになりがち(フロントヘビー)
◆トルクが細く燃費もよくない
◆製造コストが掛かる
◆整備性が良くない

デメリットに上げられた「エンジン幅の広さ」「フロントヘビー」。
これのおかげで、ボディ幅は広くなり、フロントヘビー解消のためにボディも長くなりがち。

結局、どでかいクルマがずらりと並ぶラインナップ。
軽自動車開発は中止し自社生産のクルマは全て3ナンバーサイズだけとなり、これは日本市場軽視とも受け取れます。

それでも、これだけクセのあるエンジンを全車に搭載するということの意味は、他社にはない独自性を持ち高いブランド力の形成に繋がっていきました。
そして今、その戦略が絶大な効果を発揮しています。


しかし、世界一の自動車市場・中国での販売は、他のメーカーが定石とする現地生産は無く、高い関税が掛かる輸出のみ。
営業戦略・技術面も含めて一点に集中し過ぎてるきらいがあり、環境対策も遅れ気味です。

特色ある高品質のクルマ創りに集中しブランド力を高めたからこそ今日の勢いあるメーカーに成長しましたが、切り捨ててしまった代償の「ツケ」を今後どう払うかが課題となりそうです。

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