SKYACTIV-Xの「X」に次世代ロータリーの姿が隠れてる?


2017年8月にマツダから発表されたSPCCI(火花制御式圧縮着火)。

各メーカーが永年取り組んできたガソリンエンジンの「圧縮着火」という燃焼技術をマツダは世界で初めて実用化し、これに「SKYACTIV-X」と命名しています。


後につけられた「X」には、
ガソリンエンジンとディーゼル、各々の利点をクロスオーバーさせたという意味からネーミングされたといいますが、この「X」にはもう一つの意味が密かに隠れている可能性があります。

それは、次世代ロータリーエンジンの姿なのかもしれません。
 

ロータリーエンジン最大の欠点

ロータリーエンジンが度々市場から姿を消してしまうのは、
一にも二にも燃費の悪さにあります。

2012年6月に生産を終了した自然吸気ロータリーエンジン・RX-8(5速MT)の
10.15モード燃費は10.0km/L。そして、実用燃費は6~8km/L程度でした。

燃料代がかさむことはもちろん、低炭素社会の実現を目指し燃費規制(CO₂排出量規制)が強化される現代にあって到底許容できる数値とはいえません。


 
ロータリーの燃費が悪い大きな要因は、
燃焼室のいびつな形状からくる不完全燃焼にあります。

レシプロエンジンの場合、円筒形の燃焼室のため火花点火された燃焼は均一に燃え広がりやすく、混合気は無駄なく燃焼されますが、
 
ロータリーの場合、火花点火された燃焼は
形を複雑に変えながら移動する燃焼室を追いかけるように膨張するため不完全燃焼が起こりやすく燃料の燃え残りが発生し結果、燃費が悪くなります。


そして、このロータリーエンジンの燃費を根本的に改善できるの有望な手段が
SPCCIといえそうです。

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圧縮着火をスパークプラグで制御するSPCCI

スパークプラグを本来必要としない「圧縮着火」は
吸入したガソリンと空気の混合気を高圧縮し自然着火とするもの。


スパークプラグによる一点着火ではなく、圧縮着火による多点点火となるため、
非常に薄い混合気であっても着火・燃焼(リーンバーン)が可能となってきます。

このリーンバーンは
「熱効率の向上」「ポンピングロスの低下」「熱損失の低下」となり、
大幅な燃費向上とクリーンな排気ガスの両立することができます

しかしながら、
ガソリンは着火点が低く高圧縮とすると異常燃焼が発生しやすい燃料で、
●圧縮着火を起こすタイミングは条件により多岐に変化するため着火の制御が困難
●圧縮着火での運転領域が狭い
ため、実用化には至っていませんでした。

ちなみに、ディーゼルの場合もスパークプラグはなく高圧縮による圧縮熱を着火エネルギーとしていますが、点火は軽油をシリンダー内に直接噴射タイミングで制御が可能となってきます。


そして、困難とされてきた「圧縮着火の制御」「圧縮着火での運転領域拡大」という難問を、
SPCCIではスパークプラグによる点火を「圧縮着火」のトリガーとすることで解決してきました。


 
①圧縮工程の上死点手前でスパークプラグを点火。
(この時、プラグ周りに少量のガソリンを噴射し混合気が一部濃い状態を作る)

②スパークプラグの周辺にできた膨張火炎球がシリンダー上部の圧力を高める

③膨張火炎球と上死点に向かうピストンとの相乗で急速に圧縮圧力を高め圧縮着火を促す

刻々と変化する圧縮着火の条件に合わせ、
スパークプラグの点火時期を早めたり遅くしたりし膨張火炎球を作るタイミングを調整することで、自然発火点を作り出しています。

ちなみにSKYACTIV-Xは、
圧縮着火の範囲をどうしても外れてしまう場合(高回転時等)は、
一般のガソリンエンジンと同様に振る舞い、通常濃度の混合気に戻し火花点火(一点着火)するといった目的にもスパークプラグを使用するものと思われます。


そして今回マツダが発表したSPCCIはレシプロエンジン用のものではありますが、
ロータリーエンジンから見た場合に着目されるのが、
圧縮着火は多点点火であるという点です。

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次世代ロータリーはSPCCI ?

圧縮着火は混合気全体からの多点点火となり急速に燃焼が完了します。

つまり圧縮着火は、燃焼室のどこからでも点火が始まるということで、
ロータリーエンジンのいびつな燃焼室であっても完全燃焼が可能となり、
根本的に燃費改善が期待できます。

また圧縮着火で可能となってくるリーンバーンは、
熱効率に優れポンピングロスが低下するためこの点でも燃費向上が期待でき、
更に燃焼温度が低いリーンバーンは、冷却損失が多いと言われるロータリーエンジンに有利に作用します。



しかし、
ロータリーのアペックスシールが高圧縮に耐えうるのか?
高回転するローターに合わせ複雑難解な圧縮着火を制御できるのか?

といったことなど、レシプロエンジンとは全く異なる機構を持つロータリーに適応できるものなのか未知数な点も多々あります。


電動化はロータリーエンジンには似つかわしくありませんが、
マイルドハイブリッドや電動スーパーチャージャーであれば、薄い低回転トルクをカーバーする手段として許容の範疇なのかもしれません。

しかしながら根本的な燃費改善は、
エンジン本体で行うのが最良の手法であるとはいえそうです。
 

マツダのブランド強化に欠かせない次世代ロータリー

マツダの企業イメージの筆頭に必ず挙げられるのが「ロータリーエンジン」。
それは今でも変わりありません。

そしてSKYACYIVを中心とし強力にブランド強化に取り組んでいるマツダにとって次世代ロータリーの登場は欠かせないものであり、
且つ、そのクルマはマツダのフラッグシップであることも必要となってきます。

そうしたことを考慮した場合、次世代ロータリーは
ロングストローク化し排気量アップ、または3ローター、4ローターといったような
強烈なインパクトが必要になってきます。


そしてそれがたとえ少量生産の高級スポーツであったとしても
CAFE方式(企業別平均燃費基準方式)の採用やWLTCモード燃費への移行をまじかに控え燃費規制が各国で強化される現代にあって、
この規制に適応できるだけの燃費を確保することは必須条件となってきます。



次世代ロータリーエンジンを「SKYACTIV-R」と公表しているマツダ。
もし、これにSPCCIの「SKYACTIV-X」が加われば、
「SKYACTIV-RXとなります。

そして、「RX」は国内外のロータリーエンジンの車名に使われてきた称号。
 

色々と深読みのし過ぎなのかもしれませんが、
ロータリー復活のためにはどうしても「圧縮着火」が必要だったマツダだったからこそ、どこよりも先に実用化ができたのかもしれません。

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