NEV規制は真に強いEVメーカーを創造する



NEV規制とは

中国での内燃機関乗用車の生産または輸入が年間3万台以上となるメーカーは、NEV(新エネルギー車)の生産を一定割合行う必要があるとする新しい環境規制で、2019年から実施されます。

そして、NEV(New Energy Vehicle)の対象となるクルマは、
 ● EV(電気自動車)
 ● FCV(燃料電池車)
 ● PHV(プラグインハイブリッド)

の3種のみで、日本車が得意とするHV(ハイブリッド)及びe-POWERは対象外となっています。

そしてこのNEVの生産割合は、
NEVの種類・航続可能距離・電費で異なってくる「クレジット」という指標に換算し、内燃機関乗用車の台数との割合で算出します。

その割合は、
 ● 2019年 ・・・ 10%
 ● 2020年 ・・・ 12%

例えば、
2019年に30万台の内燃機関乗用車を生産・輸入したメーカーは、
その10%に当たる3万ポイントのクレジットを、NEVの生産で獲得する必要があることになります。

ちなみに、NEV1台当たりクレジットの上限は5ポイントとなっており、
PHVの場合は最高でも2ポイントまで。
EVであれば航続可能距離350㎞以上の場合に上限の5ポイントを獲得となります。


なお、規制値を達成できない場合は
クレジットポイントに余剰があるメーカーより購入するか
罰金を支払う必要があります。

この罰金額はNEV規制がお手本とした米国のZEV規制の場合、1クレジット当たり5千ドル。メーカー間のクレジット売買価格は公表されていませんが、罰金より若干低いレートと推測されていることから、NEV規制の場合も高額なものとなることが予想されます。

なお、その年に発生した余剰及び不足分のクレジットは翌年へ繰り越すことはできませんが、特例とし初年の2019年のみ繰り越しを認めるとしています。

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NEV規制は避けて通れない

2017年の国別自動車販売台数は、

 1位 ・・・中国 (29,122千台)
 2位 ・・・米国 (17,583千台)
 3位 ・・・日本 (  5,238千台)
 4位 ・・・インド(  4,017千台)
 5位 ・・・ドイツ(  3,811千台)

中国の自動車市場は圧倒的な数で世界一です。


この年の全世界自動車販売台数は96,804千台ですから、
全世界で売れたクルマの3割は中国で売れたことに。

さらに欧米日での自動車販売が頭打ち状態なのに対し、中国にはまだ伸びしろが十分あるとされており、そんな中国で420万台近くも乗用車を販売する日本の中国シェアは約17%で、外国系ではドイツに次いで2位となっています。

日本のみならず中国は最重要自動車市場であることは揺るぎなく、
その中国が実施するNEV規制は避けては通れそうにありません。

世界の各メーカーは生き残りを賭けて、
早期かつ相当量のNEVを中国に投入する必要が出ています。
 

そもそもなぜ中国はNEV規制をするのか

都市部を中心に大気汚染に悩む中国。CO₂も含め有害物質が少ないNEVの普及を目指している点は、世界各国と同じ方向を向いていると言えます。

しかしながらNEVに必要な電力を作り出すのに中国が一番使用しているのは、化石燃料の中で最もCO₂排出量が多い石炭による火力発電で全発電の約7割。
石炭火力発電の全世界平均が約4割なので、いかに多いかがわかります。

このことは、NEV規制が本当にCO₂の削減になるのかといった疑問符が付いてきますが、クルマが集中する都市部の環境改善という観点で見た場合は意味のあることとなってきます。

NEVを推進するもう一つの理由とし、
中国が将来像として掲げる「自動車強国」が挙げられます

自動車生産では後発の中国は欧米日に内燃機関車の技術で追い付くのは困難ですが、世界的に普及が進んでいない開発途上のEVならイニシアチブを取ることも十分可能です。

内燃機関車はエンジンやトランスミッションなど複雑な機構を多く持ち、多くの周辺サプライヤーの力も必要になってきますが、中国にはこのような環境が整いきれていません。
EVであればトランスミッションも不要で部品点数が少なく、内燃機関車に比べれば参入への垣根は低いものとなります。


中国は2013年から、中央政府と地方政府の2つからNEVに多額(条件によっては100万円以上)の補助金を支給するなどしてNEVの普及に力を入れてきました。

また、都市部で実施されているナンバー別の乗り入れ規制や、自動車登録に必要なナンバー発給規制に対しNEVへの手厚い優遇措置をしています。
 

このような政府の後押しもあり、2017年には中国でのNEVの販売が77.7万台となり、世界で販売されたNEVの2台に1台は中国での販売でした。

またメーカー別にみると全世界でのNEV販売トップ20の内、
10社が中国メーカー。1,2位とも中国メーカーで、3位はテスラ(米国)。
ちなみに日本勢では日産が6位、トヨタは7位でした。

このようにNEV規制を実施する以前に中国はNEVで世界をリードしています。

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中国は車載用バッテリーでも既に世界一

EVにとっての最重要デバイスである車載用バッテリー。
「バッテリーを制する者はEVを制す」です。

そしてこの分野でも中国は既に世界一。
中国メーカーは全世界の車載用バッテリー約6割を生産しています。

そして2017年にパナソニックを抜き、この分野で1位となったのが中国メーカーのCATL。
CATLは2011に設立された非常に若いバッテリー・メーカーですが、わずか数年で世界最大手となりました。



このようにバッテリーメーカーが中国で急成長した背景には、やはり中国政府の後押しが関係しています。

中国でNEVを販売する際に補助金を受けるには、中国政府による車載用バッテリーの認定制度「ホワイトリスト」に掲載されたバッテリーメーカーより調達する必要があります。

そして、この「ホワイトリスト」に掲載されていたバッテリーメーカーは全て中国系で、業界大手のパナソニック(日本)やLG化学(韓国)などの外資系は除外されていました。


やや強引ともいえるホワイトリストからの外資系排除でしたが、
2018年にはLG化学などの韓国の車載用バッテリーメーカー3社が記載されました。

また、2018年12月にトヨタは2020年に中国で発売するEVにパナソニックのリチウムイオン・バッテリーを採用する方針と発表しており、パナソニックもホワイトリスト記載の目途が立ったと予想されます。

しかしながら肝心の補助金が2017年より段階的に減額され、2020年末をもって廃止すると中国政府は発表しており、ホワイトリストへの外資系メーカー掲載は遅かりしといったところで、トヨタ、ホンダはCATLとの提携を開始する模様です。

NEV規制開始に合わせ補助金廃止。そして淘汰へ・・・

今まで多額の補助金でNEV販売を促進し大きく発展してきた中国のメーカー。
2020年末での補助金廃止で次に頼りの綱とするのは何なのか?

それは、NEV規制で発生する「クレジット」となってきます。

2019年より開始されるNEV規制ですが、初年のみの特例として2020年へのクレジット・ポイントの繰り越しが可能としています。
このため、最初にクレジットのメーカ間売買が始まるのは2021年となり、2020年の補助金廃止と入れ替わるように発生してきます。


そして、ガソリン車比率が高い多くの欧米日のメーカーはNEVの投入数が間に合わず、数年間はクレジットの買い手側に回ることに。

逆にクレジットの売り手側となるのは、NIOなどの主要な中国EV専門メーカーとなってきます。



中国には500社以上ともいわれる大小のEVメーカーが存在していますが、
クレジットを獲得できるEVは最低でも航続可能距離100㎞以上が必要で、
ここで小規模EVメーカーは最初のふるいで落とされることとなりそうです。

そして次に、クレジットを効率よく獲得し生き残るためには
 ● PHVよりはEV
 ● 航続可能距離が長く電費の良いEV
 ● 安い車両価格
が要件となり、要は高品質で安価なEVを創り出すことが必要となってきます。

当然、性能・価格に大きく影響する車載用リチウムイオン・バッテリーの選定も厳しいものとなり、200社以上ともいわれる中国の車載用バッテリーメーカーの整理も始まります。

NEV規制によるクレジットの取り合いを契機に、本格的なメーカー淘汰の時代に中国は突入していきます。


中国は補助金等で外資系にも負けないNEV市場の下地を準備し、
今度は乱立したEV関連メーカーをNEV規制で整理し真に強いEVメーカーを育て、
世界市場でも通用する高品位なEVで「自動車強国」を目指しています。

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