「圧縮比=膨張比」が普通でなくなってきた昨今のエンジン(ミラーサイクルのお話)


「圧縮比と膨張比は同じなのが当たり前」
と、特にご年配の方はそう思われる方が意外と多いかもしれません。

ところが昨今のエンジンは、
実質的に「圧縮比 < 膨張比」となっているものが非常に多くなってきました。

 
いわゆる「ミラーサイクル」(※アトキンソンサイクルと呼称する場合もあり)と言われるエンジンで、今のクルマのトレンドとなったハイブリッドやダウンサイジング・エンジンなどにも欠かせない仕組みとなっています。
 

ミラーサイクルの仕組み

1940年代に登場したミラーサイクルの基本的な仕組みは比較的簡単で、
エンジンの吸気バルブを閉じるタイミングを変えるだけです。

その方法は、「速く閉じる」か「遅く閉じる」かの2通りで、現在「遅閉じ」が主流となっています。
 

「速閉じ」
吸気工程でピストンが下死点に到達する手前で吸気バルブを早めに閉じてしまい、吸気量を減らす

「遅閉じ」
圧縮行程でピストンが下死点から上昇を始めても吸気バルブをしばらく開けておき、吸気した一部を吸気ポートへ押し戻す


このように、シリンダー内に充填する吸気量を少なくし実質的に圧縮比を下げ、そして少なくなった吸気量のままで圧縮・爆発します。

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効果

ミラーサイクルの効果は2つあり結果、燃費が改善されます

①排気損失の低減

実はエンジンというものは爆発してからピストンが下がりきった状態でも、まだまだピストンを押し下げる余力(エネルギー)が残っているのに、排気行程に移りさっさとエンジンの外へ捨ててしまっています。

 ※この無駄に捨ててしまっているエネルギーが排気損失です

だったら最初から、爆発行程でピストンが上死点から下死点に下がる切る容積(膨張比)に、ちょうど見合ったエネルギー分だけに吸気量を少なく調整すれば、無駄なく効率良くエネルギーが取り出せます。


吸気量が減ることで実質的な圧縮比は下がりますから、
なにかと高い圧縮比で問題になるノッキング(異常燃焼)も避けらることになります。
 

②ポンピングロスの低減

理解しやすいように、
【 吸気バルブ「遅閉じ」 1,200cc 1気筒  ミラーサイクル・エンジン】
を仮の例とし解説します。

● 吸気工程では ・・・
 本来の排気量分(1,200cc)を吸い込む

● 圧縮行程では ・・・
「遅閉じ」により一部の吸入気(仮に300cc)が吸気ポートに押し戻されます。
その結果、シリンダー内に残った吸気量は900ccまでに減り、圧縮されます
 

このため、ミラーサイクルは
実質的に排気量が減ったことになり、当然これによりトルクも下がります。
 

さて、実質的に排気量が900ccに減りトルクは下がりますが、
この低くなったトルクを維持しつつエンジン回転を続行するために吸い込むべき吸気量は、相変わらず本来の1,200ccのままです。

従ってこの時、実質900ccエンジンからしてみれば、ワンランク上の1,200ccエンジンに相当する大きめなスロットルバルブの開きとなり、ポンピングロスの低下となります。

 

ちょっとだけ簡潔にすると ・・・
【A】排気量 900ccの通常エンジンは、900ccを吸気して900ccを圧縮
【B】排気量 1,200ccのミラーサイクルは、
    1,200ccを吸気して300ccを戻して、900ccを圧縮

【A】(通常エンジン) と【B】(ミラーサイクル)を比べると
圧縮する量は一緒で実質同じ排気量(同じトルク)ながら、
【B】のミラーサイクルの方がより多くの空気を吸入する必要がありスロットルの開きが大きくなるので、吸気抵抗(ポンピングロス)が減ります。

次ページ ミラーサイクルと相性のいい組み合わせ

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