ベンツの直6「M256」が復活した背景とその技術

現代に最適化したハイテク直6「M256」が採用した技術

「M256」が目指してきたのは

 ● エンジン全長の短縮
 ● 燃費規制(CO₂排出量規制)への対応
 ● 高級車向けエンジンとしてのブラッシュアップ
 ● 生産性の向上

といえいえそうです。
 

①48Vシステム

 48Vシステムは従来の12ボルト電源に加え48ボルト電源を追加するもの。

 より高圧な電源を使うことで従来の補器類の電動化(エアーコンプレッサー等)
 や新しい付加価値(電動スーパーチャージャー等)を創造しようとするもので
 欧州を中心に導入が進んでいます。

 S450ではウォーターポンプ、エアーコンプレッサーを48Vで電動化し、
 従来、エンジンから動力を得ていたベルトやプーリーを無くすことで
 エンジン負荷を減らすと伴に、エンジン長の短縮にも大きく寄与しています。


②エンジン出力直結型ISG

 エンジンとトランスミッションの間に薄型のISGを搭載しています。
 このISGも48Vで起動しており、従来の12V起動のISGよりも効率の良い
 マイルドハイブリッドを構成しています。
 



 また、エンジンとISGの接続が従来から多く見かける「ベルト駆動型」ではなく
 レスポンス・充電効率に優れる「エン出力直結型」を採用。

 このISGはエンジンとトランスミッションとの間に設置され、
 エンジン出力側に直結されています。
 これによりエンジンにベルトやプーリーを取りつける必要がなくなったことで、
 エンジン長の短縮化にも貢献しています。

 更にISGの補助によりアイドリングは520rpmという低回転を実現し、
 直6の低振動という特色を助長しつつ、低燃費にも寄与しています。

 また通常、ISGを搭載したマイルドハイブリッド車は
  ●負荷が高い最初のエンジンスタート ・・・ セルモーターで起動
  ●アイドリング・ストップ後の再起動 ・・・ ISGにて起動
   と2つのモーターを搭載し使い分けしていますが、
 M256はセルモーターを無くしISGがこの両方に対応しています。

 セルモータによる始動の場合「キュルル」というギアを噛む音が少なからずしま
 すが、この雑音を排除することで高級車向けエンジンとしての品位をアップして
 います。

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③電動スーパーチャージャー

 48V起動の電動スーパーチャージャーを搭載し、
 ターボが効きにくい低速域をカバーしレスポンスを向上しています。

 発進時の場面を想定すると
 【ISG】⇒【電動スーパーチャージャー】⇒【ターボ】

 の順で効果を発揮し、これらが連携しエンジンを補助することで
 レスポンスに優れたスムーズな走りを実現しています。

 また、低速域を電動スーパーチャージャーに任せられるようになったことで、
 ターボは比較的自由な設計(例:高回転特化型)が可能となってきます。

④ロングストローク化とボアピッチ短縮

 ベンツの前世代・直6エンジン「M104」(3.0L版)とボア・ストロークを
 比較してみます。

 【 ボア × ストローク 】
  M104 88.5 × 80.2 ㎜
  M256 83.0 × 92.3 ㎜

 以前のM104はショートストロークタイプでしたが、
 M256はロングストロークとしています。

 また、ボアピッチは90㎜と短く、
 気筒間の壁厚は7.0mmとかなり薄くした設計で、
 ロングストローク化と併せエンジン全長を短縮しています。

 これだけ気筒間を薄くするとボアアップによる排気量アップは望めそうに
 ありませんが、ダウンサイジングの潮流の中でメルセデス・ベンツは
 この直6「M256」の排気量を3.0L固定とする方針の模様で、
 出力アップが必要な際は、主にターボ換装による対応となってきそうです。

直6復活は世界に波及する?

M256は新たな電動化技術の助けを借りつつ
エンジン全長の短縮が可能となったことで直列6気筒の縦置きとし
復活してきましたが、

これをFF用に横置き搭載とするには
さすがに無理がある大きさといえそうです。

だったら、V6は引き続き必要なのだろうと思いきや
今回の新型・直6登場に伴い、V8の開発・製造は続行するものの
V6の開発は中止するとメルセデス・ベンツは発表しています。

というのも、
世界的にみるとV6の横置き・FFという事例は多いながら、
メルセデス・ベンツにはV6を横置きとするクルマが無いことが、
「直6復活 ⇒ V6開発中止」の流れにも繋がっているようです。

こうしてみると、今回の直6復活劇はメルセデス・ベンツ特有の
お家事情にもみえてきます。


 
しかしながら、世界的にダウンサイジングの流れが進行する中で

・V6をハイブリッド化した直4に置き換えする事例が増え
・縦置きのV8の代わりがV6である必然性も無くなり、
・ベーシックな直4の兄弟エンジンはV6では作れない

など、次第に存在価値が薄れ行くV6が
今後とも安泰の座に居続けるとも思えません。

そして、
たぐいまれなエンジンフィーリングを生まれ持つストレート・シックスは
燃費規制が激化する現代の「ハイエンドクラス用ダウンサイジング・エンジン」として、その存在意義を新たに見い出してきたと言えます。

こうした諸々の側面を加味していくと
直6の世界的復活はあながち無いとも言えません。

前のページ ⇒ 「なぜ今、直6?」

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