ベンツの直6「M256」が復活した背景とその技術


2018年3月に日本で正式発表となったメルセデス・ベンツのS450。

これに縦置きFRとして搭載されてきたのが「M256」という直列6気筒エンジンで、メルセデス・ベンツとしては約20年ぶりの直6復活となりました。



この時点で直6を量産しているは、BMWとベンツだけですから
世界的にみても久しぶりの新型・直6登場となったわけです。


では、なぜ今、直6なのか?
その背景と復活を可能とした技術をみていきます。

〈M256 スペック〉
 ● DOHC 直列6気筒 ガソリンエンジン
 ● ターボチャージャー  + 電動スーパーチャージャー (ツインチャージャー)
 ● 総排気量:2,996cc
 ● ボア×ストローク:83.0×92.3㎜
 ● 最高出力:367ps(5,500~6,100rpm)
 ● 最大トルク:51.0kg・m(1,600~4,000rpm)
 ● ISGをエンジン直結
  ※ISGは45ボルト起動(最高出力16kW、最大トルク250Nm)

なぜ今、直6? 

直6が衰退しV6が増殖

もともと乗用車への搭載例が多かったのはV6よりも直6の方。
1960年~2000年あたりには、世界的にみてもごろごろと直6搭載車がありました。

そして日本でも同様で、直6を生産していたのはトヨタと日産の2社だけだったとはいえ搭載車種の数はかなりのもの・・・

 クラウン、クレスタ、マークⅡ、スープラ、
 セドリック、ローレル、スカイライン、フェアレディZ 等々・・・



しかしながら2000年を跨ぐごろから、
次第に各メーカーから直6が消滅していきます。

< 各メーカーの直6が最後となった年(一部)>
  1997年(平成9年)  メルセデス・ベンツ
  2002年(平成14年)日産
  2007年(平成19年)トヨタ
  2015年(平成27年)ボルボ
 

そして市場から直6が消滅していくのと並行して、
急速にV6搭載車が増えていきます。

では、なぜ?
 

直6は長く、V6は短い

シリンダーを真っすぐに順序よく並べていく 直6 ⇒ <エンジンが長い>
シリンダーを交互に交差し並べていく V6 ⇒ <エンジンが短い>

直6という「長いエンジン」が、
当時のクルマ情勢にいろいろとマッチしなくなったのが要因といえそうです。


①衝突安全

現在、最も知名度が高い自動車安全テストと言われる欧州の「ユーロNCAP」が設立されたのが1997年。

このテスト結果は公表され、クルマの安全性は新車購入時の一つの指標とみられるようになりました。

1990年代、このような自動車安全テストは日本も含め各国で始められるようになりましたが、真っ先に義務付けされたのが「前面衝突テスト」。

この前面衝突テストが非常に苦手だったのが直6搭載車でした。
直6はその長さゆえ、横置きが困難で縦置き搭載が定石です。そのため、

  ● 長いエンジンが邪魔で、衝撃吸収となるクラッシュブルゾーンが
    ボンネット内に確保しずらい

  ● 前面衝突時、細長い金属の塊(直6エンジン)が室内に食い込みやすい

多くのメーカーがこの難点をクリアできなかったのが、
直6が消滅していった最大の要因とみられています。

 
②FFへの搭載

FFの場合、エンジン横置きが定番。
その横置きが直6には長過ぎて、ボンネットにまず収まりません。
でも、V6なら横置きで搭載でき6気筒のFFが成立します。


FFは当初、室内空間をより広く安価に作ろうと小型大衆車から拡大。

それが、1980年頃になるとミドルクラスのセダンまでもFFを採用するようになり、世のクルマの大勢はFRからFFへと逆転していきます。

そして1990年頃、日本ではミニバンブームが始まり、
2000年頃からはSUVが台頭し始め、現在の世界的な大SUVブームに至ります。
(ミニバンもSUVもFFベースが多数)

特にSUVは各メーカーのドル箱的ジャンルに成長しました。
(2017年には全世界で販売した車の内、SUVの割合が34%にもなったとか)

6気筒を必要とする高級・大型のSUVも登場してきており、
横置きができない直6の活躍の場は次第に減少していきました。

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直6は短くできばメリットが多い

エンジンを短くでき衝突安全性を確保できたら、
直6にはどんなメリットがあるのでしょう?

 直6は理論的に振動が皆無という完全バランスしたエンジン

  V6、V8よりも振動が少なく「シルキー」とも評されるウルトラ・スムーズな
  直6は高級車にピッタリ。

 ● モジュラーエンジンを構築しやすい

  直列エンジンの場合、ボア、ストローク、ボアピッチを共通として
  ピストンを直線状に並べていけば、6気筒、4気筒、3気筒の異なる排気量の
  エンジン・バリエーションが作りやすく(モジュラー化)、
  部品の共用化を高め製造コストを下げることができます。
  (シリンダーブロックが2つとなるV6ではこうはいかない)

  ちなみに、最も燃焼効率に優れ燃費に有利される1気筒当たりの排気量は
  400~600cc。

  M256の1気筒当たりの排気量は、このちょうど中間の約500cc。
   500cc × 6気筒 =3.0L
   500cc × 4気筒 =2.0L
   500cc × 3気筒 =1.5L

      燃焼効率の良い兄弟エンジンが作りやすい排気量設定といえそうです。  

 ● 生産性が向上する

  同じ生産ラインで直列6気筒と直列4気筒を混同しての製造が可能となり
  柔軟な生産体制が構築でき生産性が向上します。

  V6の場合は専用の生産ラインが必要。

 高価な触媒が少なく済む

  排ガスを浄化する触媒は、温度が上昇して化学反応が促進しないと
  性能を発揮できません。
  そのため、エンジンのなるべく近くに設置するのが定石。

  そのためV型エンジンの場合、排気がエンジン外側の両サイド
  2方向から出てくるので高価な触媒が2個必要となってしまいます。

  直6の場合は片側1方向からとなるため触媒が1個で済み、
  6気筒分の排気ガスがまとめて触媒に当たるので早く温度が上昇し
  排ガス対策に有利です。

次のページ ⇒ 「現代に最適化したハイテク直6「M256」が採用した技術」

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