「センタータンク」はなぜホンダ車ばかり?


「センタータンクレイアウト」は、フィット、ヴェゼル、Nシリーズなどホンダの小型車や軽自動車などに多く採用されていますが、

その他では、過去に三菱自動車の軽「i(アイ)」に採用された程度で他社での採用例はほぼ見当たりません。

スペース効率に優れているとホンダがアピールする「センタータンク」ですが、他社が採用してこないのはなぜなのでしょう・・・
 

そもそもなぜセンタータンクはスペース効率がいい?

通常ガソリンタンクは後部座席の下に置かれますが、
これを、比較的空間が開いている前席の下に樹脂製の薄型燃料タンクを配置したのがホンダのセンタータンクレイアウトです。




これにより後席の下に邪魔なものがなくなり、
荷室の床が低くでき(低床化)、後席を倒した時も床がフラットにしやすくなり、更に多彩なシートアレンジも可能となってきます。

● 低床化(※背の高い荷物も積める)
● フラット化 (※荷物が積みやすい)

は、荷室を設計する上で重要な要件で、

特に軽自動車や小型車の場合、荷室はある程度犠牲にしてでも搭乗者のスペースを優先とし、大きな荷物を運ぶ時は後席を倒して荷室を確保するといったやり方になってきますから、小さなクルマにとってセンタータンクレイアウトは有効な方法となってきます。
 

メリットとデメリット

最大のメリットは前述のように、
● 荷室の低床化とフラット化

その他として、タンクが中央寄りになることで
● 燃料の量の変化による前後重量配分の変化が少なくなる
といったことも挙げられます。


逆にデメリットしては、

● フロントヘビーを助長してしまう
小型車に採用例が多いFFはそもそもフトントヘビーですが、重量物の燃料が更に前寄りになることでこれが助長されることに

● 排気管が真っすぐに出来ず長くなる
センタータンクが邪魔で真っすぐに通せず、クルマの横角を這わすような配置に

● 給油管が長くなる
後ろの給油口からタンクまで遠くなるため

更に細かいところでは、 前席下の空間が無くシートスライド・レバー前に出っ張り、それがふくらはぎに当たって不快にといったことも・・・


そして、最大の難点は
● プラットフォームの設計に制約を与える
ことと言えそうです

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センタータンクは軽量化に不利?

「センタータンクレイアウト」はホンダの特許で、三菱自動車の「i(アイ)」はこの特許を購入して開発されました。

「車両用燃料タンクの配置構造」というその特許は、
● 前席下のフロアパネルに膨出部(くぼみ)を設けそこに燃料タンクを配置するようにした
● その燃料タンクを四方からメンバーが囲み、2本のフロアフレームがその燃料タンクを支持するような構造とし脱着も可能

とし、こうすることで前席下に燃料タンクを配した上で、安全性、強度、静粛性、メンテナンス性を確保しています  と要約できそうです。



率直にいって、「だれでも考え付きそうなこの構造が特許?」
という設計素人の私のツッコミは置いといて・・・


昨今はプラットフォームの刷新が各メーカーで目白押しですが
そのトレンドは

 ① 軽量化と高剛性の両立
 ② プラットフォームのモジュール化

特に①の「軽量化と高剛性の両立」はどのメーカーも昔から取り組んでいる永遠のテーマで、燃費規制が厳しくなる今日においては軽量化が重要項目になってきました。


そして最近になって刷新されたプラットフォームの中に、

● スズキの「HEARTECT(ハーテクト)」




● スバルの「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」

 

がありますが、下から覗いたこの二つ・・・

一見すると非常によく似た構成で、
前後に長くなだらか伸びる2本のフロアフレームが特徴的。

こうすることで接合部分を減らし衝撃吸収をしやすくし、
補強材を減らして軽量化をしつつも高剛性とし、クルマの基本性能を確保しようとしているようです。


さて、センタータンクの場合はというと、
後席足元付近のフロアは後席を沈めフルフラットにする関係からここにフレームを通すことはできませんし、そもそもタンクが邪魔になってきます。

結局、センタータンクありきでは制約が多くなり、高剛性を確保しつつ軽量化を図るのには不向きなレイアウトといえそうです。
 

他社がセンタータンクを採用することはある?

センタータンクを採用したフィット、ヴェゼル、N-BOXの売り上げは順調で、
特にN-BOXは軽自動車の月間販売台数1位を連続キープしています。

また、ヴェゼルもSUV部門で永く販売トップとなっていた時期がある人気車種。

こういった状況を傍から見ている他のメーカーは、センタータンクに魅力を感じているのか、いないのか ・・・

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仮にホンダが特許を持っていなかったとしても、他のメーカーがセンタータンクを採用してくるかは非常に微妙といえそうで、その理由は・・・

前述の通り、センタータンクレイアウトが軽量化と高剛性の両立には不利といった点は、今後世界的に厳しさを増す燃費規制をクリアしていく上で難点となってきます。

また、e-POWER(ノート)など前席下に駆動用バッテリーを搭載するものも登場し、クルマの電動化が進む昨今にあっては、空間に余裕がある前席下に搭載するものは何も燃料タンクだけとはいえなくなっています。

燃料タンクを搭載しつつも大きく重い駆動用バッテリーの搭載も考慮しなければならなくなった今後のプラットフォーム。
今、巨額を投じてセンタータンク用のプラットフォームを新規開発する意味は、将来的にみて薄いといえます。


さて、当のホンダからすると
● 他社との差別化
(※センタータンクといえば「ホンダ」というイメージが定着)
● 販売面で成功し実績あるセンタータンク用のプラットフォームを既に持っている

ことから、当面は自社の小型車向け看板技術として採用を続けていくこととなりそうで、ホンダならではの画期的なアイデアで、更に進化したセンタータンクレイアウトを提示してくれるかもしれません。
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