ツインエアの「エア」って何のこと?


フィアット500などに搭載されるツインエア(twinair)というエンジンは、近年、稀にみる2気筒エンジンというところに話題が集中していますが、実は超ハイテクエンジンなのです。

さて、「ツイン」は2気筒のことだと想像がつきますが「エア」は何のことかわかりますか? 実はこの「エア」にこそハイテクの意味が隠されています。
 

「マルチエア」のすごいところ

このエアとは「マルチエア」のことを指しています。

マルチエアはフィアットグループのFPT(フィアット・パワートレーン・テクノロジー社)が開発した最新の可変バルブ機構です。

一口に可変バルブ機構といっても種類はたくさん。
 
有名なところでは、VTEC(ホンダ)、VVT-i(トヨタ)、バルブトロニック(BMW)などが浮かんできますが、これらはカムシャフトでバルブを押し下げる機械式の可変バルブ機構です。

一方、マルチエアは「電子制御による油圧駆動式の可変バルブ機構」で世界で唯一無二のもの。

可変バルブ機構は効果が大きい吸気側のみですが、従来のようなカムシャフトで押し下げる方式ではなく、電子制御により油圧ポンプで吸気バルブを押し下げる方式です。

そして、カムシャフトは排気側の1本しかありません。



これにより、
● バルブの開閉タイミング、リフト量の自由度増大
● 基本的にスロットルバルブが不要でポンピグロスが低下
● 吸気バルブの2回開け
● 気筒毎に異なった制御

が、電子制御によるバルブ開閉で自由かつ精密になったことで可能となり、高出力・低燃費・クリーンを両立したエンジンとなっています。

マルチエアを最初に採用したのは、フィアット傘下のアルファロメオ・ミトで2009年に1.4L 直4エンジンとしてデビューしています。

そして、この最新式の可変バルブ機構を2気筒エンジンに採用したのが2010年に登場の「ツインエア」です。

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この時代に、なぜ2気筒?

2気筒の最大のデメリットは振動と騒音。

この解消のため特大のバランサーを搭載しているわけですが、それでも2気筒特有の振動・騒音は低回転域では残っており、アイドリング・ストップを搭載しているとはいえ多少気になってきます。

それでも、フィアット500やパンダといったクルマのキャラクターならば、この振動・騒音も「味」として許容の範疇に吸収してくれています。



さて、とっくに見捨てられた思われていた2気筒を採用とはフィアットも思い切ったことをしたなといったところですが、では、なぜ今なのでしょう?

それは、世界一厳しいといわれる欧州CO₂排出量規制(燃費規制)への対応。
2021年に更に規制が厳しくなることから燃費改善を強く求められており、そんなおり2気筒ターボのダウンサイジングで燃費とパワーの両立を狙ってきました。

さて、2気筒のメリットとしては、
●摺動抵抗が少ない
●1気筒当たりの排気量が理想的に
●軽量・コンパクト
●製造コストの低減

気筒数が少なる分、摺動抵抗が少なくなります。
また、燃焼効率が良いとされる1気筒当たりの排気量は400~600ccと言われ、総排気量875ccのツインエアは理想的な数値になってきます。

また、コンパクトなエンジンは何かと設計が楽に。
今後、欧州では48Vマイルドハイブリッドの搭載例も徐々に増加していくものと思われますが、その際にもISG(アシストモーター)やバッテリーの搭載がしやすくなります。

更に、ツインエアはメタン燃料の使用も視野に入れ設計されています。

マルチエアとターボを組み合わせ1クラス上の動力性能を手に入れつつも同一パフォーマンスクラスのエンジンに比べ約30%ものCO₂排出量削減を達成しており、ツインエアは現代に蘇ったハイテク・2気筒エンジンです。

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