発進用ギア付きCVTが生まれてきた背景


2018年2月、世界初となる発進用ギアを装備した新型CVTの
「Direct Shift-CVT」がトヨタから発表されました。



そもそもCVTといえばギアを持たない無段変速機との認識でしたが
機構が複雑になってまで改良してきたのには、

CVTの弱点を補いつつも、間近に迫った新燃費表示「WLTCモード」への移行対処など、様々な事情が絡んでいるようです。
  

CVTの弱点

無段変速のCVTは、
走行状況に合わせてきめ細かく最適な変速比を設定できるAT。

加減速が多い日本の道路事情にマッチし、
スムーズな走りと良好な燃費を両立しているCVTは、
日本で最も普及しているATです。

しかし、こんな弱点も・・・

【伝達効率が悪い】

ベルトをプーリーで挟み込み動力を伝達するCVTは、
 ●スリップロスが発生
 ●ベルトをプリーで挟み込む油圧をエンジンから調達

などの損失が発生します。そのため・・・
 ●レスポンス悪化
 ●燃費に悪影響
 ●ハイパワー車には不向き

となってきます。


【変速比幅を多く取れない】

構造上、ハイギアード側の変速比が低くなりがちで、
高速走行ではエンジンを多く回す必要が出てきます。

これは燃費には不利となり快適性も損ないます。

プーリーを大きくすれば変速比幅を多くすることができますが、
そうすると慣性が大きくなりレスポンス・燃費が悪化します。
また、 筐体も大型化してしまいます。

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「Direct Shift-CVT」の特徴

Direct Shift-CVTはCVTの弱点をカバーすべく
以下3点の特徴を備えてきました。
 

①発進用ギアを装備

発進用ギアが低速側を受け持つことで変速比幅を15%ワイドレンジ化。
これにより、高速走行時の燃費・快適性の改善が可能となってきます。


また、このギアの採用は
CVTで特に嫌われいた発進時のもたつきと伝達ロスも大きく改善しています。

 

②プーリーとベルトを小型化

負荷が大きくなる発進時をギアが受け持つことで、プーリーとベルトが小型化されています。

小型化は慣性がちいさくなり、レスポンスの向上につながります。

 

③ベルトを挟角化

プーリーがベルトを挟み込む角度を狭くしています。
これもやはり発進用ギアを採用したことで、ベルトへの負荷が減ったことで実現できたもの。

これにより、変速速度が上がりレスポンスが向上しています。



以上のように発進用ギアの装備は様々な恩恵をCVTに与えたようで、
トヨタの公表によると

 ● 燃費は6%向上
 ● 変速速度は他社DCTと同等以上

と、特に高速変速ATとして定評のある
DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)と同等以上の応答性
という点にはちょっと驚きです。

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発進用ギア付きCVTが生まれてきた背景

WLTCモードへの対処

2018年10月にクルマの燃費表示がJC08からWLTCに移行されます。

燃費のカタログ表示だけでなく、燃費規制にも関わってきますから移行への対処は自動車メーカーにとって最重要課題。

さて、WLTCはJC08の燃費試験方法と比べると、
「最高速度と平均速度が上昇」し「加減速が増加」しています。

また、カタログへの燃費表示は
「市街地モード」「郊外モード」「高速道路モード」と「これらを平均したもの」の4つが表記されます。

高速走行が苦手なCVTにとって速度域の上昇と高速道路モードのカタログ表示は痛いところで、「Direct Shift-CVT」が変速比幅をワイド化してきたのもこれへの対処と受け取れます。
 

グローバル展開の拡充

日本では採用例が多いCVTですが、
欧州では人気が今一で、DCTもしくはトルコン式ATが主流。

これは、MT比率が高い欧州ではCVTのダイレクト感が薄いドライビングフィールが嫌われているためともいわれており、また、平均速度が日本に比べ高いことも影響しているようです。

「Direct Shift-CVT」がレスポンスの向上と高速域強化に力を入れてきたのも、
欧州での成績が他の地域に比べ見劣りするトヨタにとっては
特に必要だったといえそうです。
 

新型CVTの登場はトヨタには必然だった?

昨今ではトルコン式ATの多段化が顕著で
日本も含め世界的にみてもその採用例を多く見かけるようになりました。

このような状況化、CVTは廃れる運命にあるミッションかとも思っていましたが、
ここにきて新型CVTをトヨタが開発してきました。

ラインナップを豊富に抱え、CVTの搭載車が多いトヨタにとって、
おいそれとトルコン式ATには移行できないとの事情があるのかもしれません。


 
今回発表された「Direct Shift-CVT」は2.0Lクラスをターゲットとしており、
販売ボリュームが大きく高速走行の快適性・経済性も重視される
ミドルクラスからまず対処としたものとみられますが、

ギアが付いてベルトへの負荷が減ったことで、
更に排気量の大きいクルマへのCVT搭載が可能となってくるかもしれませんし、
コンパクト・クラスへの新型CVT採用も検討の対象になっているはずです。

そして、確かな資料がないため推測の域を出ませんが、
わずかながらもトルコン式多段ATよりも新型CVTの方がコストが低いのでは・・・

開発力を豊かに持ちコスト管理に厳しいトヨタではなかったら、
発進用ギアを持った新型CVTは生まれてこなかったかもしれません。

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