進むクルマのバイワイヤ化


「バイワイヤ(by-wire)」とは、
アクセルやハンドル操作など、機械的・物理的に伝達してものを電気的な伝達に置き換えるものです。



従来、航空機など大型の移動体で普及してきたバイワイヤですがクルマの分野でも採用例が増えており、将来的にはクルマの操作系全てがバイワイヤ化される可能性があります。

今後の完全自動運転を展望する上でも必要とされるバイワイヤ化とは、どういったものなのか見ていきます。

 

バイワイヤ化のメリット

バイワイヤ化に当たって必要なものは、

①操作量を感知するセンサー
②電気信号を物理運動に変換するアクチュエータ(モーターなど)
③センサーからの信号を統合管理しアクチュエータに動作量を命令するECU

従来必要だった鋼鉄製ワイヤ、油圧パイプ、鋼鉄製のロッド類など、
「重く・スペースを取り・経年劣化しやすい」ものが不要となってきます。

また、スロットル、ブレーキ、シフト、ハンドルなどの操作が電気的に集約・統合管理され、加速中か減速中かなどの走行状態により適切なエンジン出力・シフト操作を行い、最も効率の良い走行を選択することが可能になります。
 

以上のことからバイワイヤ化により

 ● 操作性の向上と補助
 ● 軽量化・省スペース化
 ● 車両設計の自由度向上
 ● 安全性の向上
 ● メンテナンスの向上
 ● 低燃費と低エミッションの両立
 ● ドライビリティの向上

などのメリットが生まれます。

また、電気的に各操作を統合管理することができるバイワイヤ化は、将来の完全自動運転にも必要不可欠となってきそうです。
 

バイワイヤ化の種類

 

スロットル・バイワイヤ

アクセル・ワイヤを介し物理的にスロットル・バルブの開閉をしていたものを、アクセル・ペダルの踏み加減をセンサーで感知し電気信号とし、ECUが動作量を計算後アクチュエータに伝えスロットル・バルブを開閉します。


横滑り防止装置(ESC、VSC)の義務化、クルーズコントロールや踏み間違えによる飛び出し防止装置の普及などでスロットルの自動制御が必要不可欠となってきたことからも、現在のクルマのほとんどがスロットル・バイワイヤを採用しています。

また、低炭素社会を目指し燃費向上が叫ばれる中、可変バルブ機構や大量EGRの採用が多くなりポンピングロスや排気損失を低下させることで、更なるエンジン効率の向上を目指していますが、

これらの機能を最大限発揮するには燃料噴射の量・タイミングとのシンクロが重要となることからも、スロットル・バイワイヤは必要不可欠なものとなっています。
  

ブレーキ・バイワイヤ

最初に通常の油圧式ディスク・ブレーキの仕組みをおさらいしてみると、

①ブレーキペダルを踏む → 倍力装置で力を増幅 → マスターシリンダーを押す
②マスターシリンダーで油圧を発生
③発生した油圧は配管を経由しブレーキ・キャリパーを動かしローターを挟む

となります。



そして、ブレーキ・バイワイヤは大まかに言って2種類存在します。

A.油圧式
ブレーキペダルの操作量をセンサーで感知しECUで計算後アクチュエータ(ハイドロリックユニット)に命令。
アクチュエータは油圧を発生させ、配管を経由後ブレーキ・キャリパーを動かしローターを挟む。

B.電動ブレーキ式
ブレーキペダルの操作量をセンサーで感知しECUで計算後アクチュエータに命令。
アクチュエータは直接、ブレーキ・キャリパーを動かしローターを挟む
 

現在のブレーキ・バイワイヤの主流は、通常ブレーキの延長線上といえるAの「油圧式」で、万が一、ブレーキ・バイワイヤが故障した場合も、油圧経路がバックアップとなります。
 

さて、ブレーキ・バイワイヤのメリットは
 ● ABS、横滑り防止装置、自動ブレーキなどとの親和性が高く安全性が向上する
 ● 回生ブレーキと摩擦ブレーキとの協調性がしやすい

となり、回生ブレーキの搭載が定番となっているハイブリッド車のほとんどがブレーキ・バイワイヤを採用しています。

また、電動ブレーキ式の延長として「電動パーキングブレーキ」も登場。ボタン操作もしくはATをPレンジにいれるとパーキングブレーキが自動で掛かり、ATをDレンジに入れた場合など発進時には自動解除となる電動パーキングブレーキの搭載例が増えてきました。

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シフト・バイワイヤ

シフトポジションを電気的に読み取り、アクチュエータを介しシフトチェンジを行います。

従来はトランスミッションに近いフロアにレバーを設置するものが多く、MT車の場合、重く・場所をとり・経年劣化しやすいシフトリンケージという鋼鉄製のロッドが必要となってきます。

近年はドライビリティとエンジン効率の両立を狙ったCVT、DCT、AMTなど様々なオートマチック・トランスミッションが誕生し、

さらにモーターとエンジン駆動を連動させるハイブリッドや、トランスミッションそのものを装備しない電気自動車(EV)も増え、トランスミッション自体そのもののあり方が多様化していることから、自由度が利くシフト・バイワイヤが一般化していると言えそうです。
 

その結果、
室内スペースが広く取れる「インパネシフト」や、ハンドルから手を放さずに操作できる「パドルシフト」などが普及してきましたが、シフトレバーそのものが無くなり「ボタン式」や「ダイヤル式」のものも高級車を中心に徐々に増えてきました。



まとめるてみるとシフト・バイワイヤは

● 設置場所を選ばず位置・デザインの自由度が向上
● 走行状況により効率的なミッション操作を自動化
● 人が行うよりもスムーズで速いミッション操作


などといったメリットが生まれてきます。
 

ステア・バイワイヤ

ハンドルとタイヤ操舵が機構的に完全に分離されており、ハンドルの動きをセンサーで感知しECUで計算後、動作量・速さを電気信号で命令しアクチュエータでタイヤを操舵します。



ステア・バイワイヤのメリットは

● 高速走行時の無意識的に行っている「ハンドル微調整」が不要
● 荒れた路面、轍(わだち)を走行時に行う「当て舵」が不要
● 不快な「キックバック」を解消
● クイックなステアリングモードへの切り替えなど自由度向上

と、ドライバーの疲労軽減や、走行シーンに合わせステアフィールの変更が可能となります。
 

また、今後の完全自動運転を想定した場合にも有効なシステムといえます。

一例として、自動運転中に緊急回避としてハンドルが急回転すると、搭乗者がケガをすることが想定されますから、ハンドルはあえて回転しないほうが安全上いいことになります。

ちなみに、日産が「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」という名称で、ステア・バイワイヤを市販車に世界初採用していますが、普及は今後といったところ。



以上、バイワイヤ化によるメリットは多岐に渡りますが、操作フィーリングやクルマから返ってくるインフォーメーションに違和感を感じる場合も。

また、様々な電装品装備が増える一方のクルマですが、バイワイヤ化により更にモーター駆動等が増えることでクルマの電力不足が懸念されており、従来の12V電源に加え48V電源を追加する動きが欧州を中心にみられます。

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